Introduction to Japanese Study - 日本語学習入門
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(以上は、「東京大学日本語教育センター・ニュース」36号に掲載の菊地康人〈本センター元教授〉「日本語の特徴を知って効果的に勉強しよう(4) 助詞「は」と(情報構造)」とほぼ同じ内容です。) 38 「が」はcase marker 「は」については、大体わかりましたね。では、「が」はどうなのでしょう。もう一度、(1)と(2)を並べてみましょう。 (1)田中さんがお茶を飲みました。 (2)田中さんはお茶を飲みました。 (2)は、今述べたように、「田中さんは何を飲んだかというと……(または、田中さんは何をしたかというと……)」というような述べ方なのですが、(1)のほうは、いわば「どんなことがあった(起こった)かというと……」というような述べ方です。あるいは、「誰がお茶を飲んだかというと……」という場合もあります。どちらにせよ、「田中さん」をtopicとして述べる述べ方ではありません。「が」は、topic markerではなく、あくまでも格を示すcase markerなのです。先程の(3)で、目的語をtopicにして文頭に持ってくることができたのも、その後の「田中さん」にcase markerの「が」が付いているため、文頭の「お茶」を主語だと誤認する心配がないからだ、と考えることもできるでしょう。 以上のように、「は」は、日本語の文の述べ方(特に〈情報構造〉)と一体となった特徴的な助詞です。「は」の使い方に習熟することは、日本語に習熟することでもあります。 「は」や、「は」と「が」の違いについては、ほかにも触れるべき点がいくつかありますが、ここでは最も基本的な点を述べました。 なお、もう少し詳しく知りたいという上級の学習者は、たとえば拙稿「ハとガの話」(『UP』〈東京大学出版会のPR誌〉31巻12号、2002年12月号)をごらんください。 大事な点のまとめ: 日本語学習へのアドバイス(4) 「Xは……」は、「私はXについて話そうとしています」という合図(「は」はtopic marker)。 田中さんはお茶を飲みました。 ← 田中さんは何を飲んだか(何をしたか)というと…… お茶は田中さんが飲みました。 ← お茶は誰が飲んだかというと…… 田中さんがお茶を飲みました。 ← どんなことがあった(起こった)かというと…… または、 ← 誰がお茶を飲んだかというと……

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