Introduction to Japanese Study - 日本語学習入門
35/42

◆ 助詞「は」と〈情報構造〉32 case markerとは;「は」はcase markerではない このページでは、助詞「は」の話をしましょう。「は」は、日本語の文の述べ方(特に、情報の提示の仕方)に深く関係する、日本語に最も特徴的な助詞だといってよいものです。ついでに、「は」と、よく似ているとされる「が」との違いについても、簡単に触れます。 「日本語って、どんな言葉?」のページで、次のように述べました(以下十数行は、そのページの最初の部分の要約です)。 (a)田中さんはお茶を飲みました。(Tanaka drank tea.)(b)田中さんは佐藤さんときっさてんでお茶を飲みました。(Tanaka drank tea at a coffeeshop with Sato.) (a)(b)の「お茶を」の「を」は「目的語のしるし」object markerで、「お茶」が目的語であることを示します。(b)の「佐藤さんと」の「と」は、英語でいえばwithの意味をあらわし、「佐藤さんと」で“with Sato”です。また、「きっさてんで」の「で」はatのような意味で、「きっさてんで」で“at a coffeeshop”です。このように、助詞は、その名詞の文中での役割を示します。「お茶」は目的語、「佐藤さん」は行為のパートナー、「きっさてん」は行為が行われる場所で、これがそれぞれの名詞の「役割」ということです。 この「役割」のことを文法用語で格caseといいます。 「を」「と」「で」は格を示す助詞で格助詞case particleあるいは「格のしるし」case markerと呼ばれます。 さて、「は」については「主語のしるし」subject markerだと、そのときは述べました(subject markerということはcase markerの一種ということになります)。しかし、そのすぐ後に、「……と、この段階では説明しておきましょう」と、付け加えておきました。この述べ方からもお察しいただけるでしょうが、実は、「は」は、本当は、subject markerでもcase markerでもありません。そのときはとりあえずそう説明するしかなかったのですが、今日は「は」の本当の性質について、より深く説明することにします。

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る