18 辞書形に慣れよう ついでながら、タイプIIかの識別は、辞書形からだと、このようにしてできるのですが、マス形からだと、識別することはできません。-emasuならタイプIIなのですが、マス形が-imasuだと、タイプIかIIか、識別できないのです。たとえば、okimasuの場合、タイプI(辞書形oku)か、タイプII(辞書形okiru)なのか、両方の可能性があります。この場合、実際、「置く」put on、「起きる」get up, wake upという両方の動詞があります。実際には片方しかない場合ももちろんたくさんありますが、そのどちらであるか、わからないわけです。 結論として、動詞の活用のタイプの識別は、マス形から識別しようとしても無理で(無理な場合があり)、辞書形に基づいて識別するのがよい、ということになります。言い換えれば、《辞書形を覚えれば、自動的に活用のタイプもわかる》わけです。ですから、《動詞を語彙として覚える場合は、辞書形を覚えるべきだ》ということになります。 日本語学習の最初期は、(一般的な教え方の場合)しばらくの間マス形だけを勉強する時期があるため、その後まもなく辞書形を習うようになってからも、皆さんの中には、「辞書形をもとに考える」という習慣がなかなかつかず、いつまでも「マス形が、いちばんなじみのある形。まずマス形を覚え、いつもマス形をもとに考えて、他の形もすべてマス形をもとに作る」というタイプの人がいます。しかし、「辞書形をもとに考える」ように、早く切り替えることをおすすめします。辞書を引く上でも、上述のように活用のタイプを識別する上でも有効だからです。日本語のネーティブスピーカーは「辞書形をもとに考える」思考法が身についているわけで、留学生の皆さんも、同じ思考法に慣れていくことが、結局上達につながるように思います。(日本語教育センターでは、最初期から辞書形を教える方法で効果をあげています。) 識別の例外 「ここまではわかりましたが、さっきの識別のルールに例外はないのですか。」って? うーん。正直に言いましょう。例外は、実は結構あります。例外というのは、「辞書形の最後の3つのアルファベットが-iruか-eruなのに、タイプIであるもの」が存在する、ということなのですが、日本語全体では結構あるものの、初級の動詞の中ではごくわずかで「帰るreturn・入るenter・走るrun・切るcut・知るknow」の5語、もう少し多めに見ても10語程度です。特に多いとも思えませんが、いかがですか。(日本語の伝統的な文法をよく知っている人のために補足すると、今あげた「識別の例外」は「ラ行五段活用の動詞で、ルの前の母音がiまたはeであるもの」にあたります。活用の仕方自体が変則的なわけではなく、形の上で一段動詞と紛れやすいために注意を要する、というタイプの動詞です。)
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