◆ 動詞とその活用12 日本語を勉強してまだごく初めのうちは、動詞の勉強はとてもやさしそうに見えます。「飲みます・飲みました・飲みません・飲みませんでした」。現在も過去も肯定も否定も、nomimasというところまで一緒で、その先がちょっと変わるだけ。これで大抵のことが言えそうだな。日本語は結構簡単そうだ……。 ところが、少し経つと、「飲む」「飲まない」「飲んで」と、いろいろな形が出てきて、不変化の部分は、nomまでしか(「飲んで」の場合はnoまでしか)保たれません。こんなに変わるんじゃ、かなわないな……。これまで習ってきた「飲みます・飲みました・飲みません・飲みませんでした」は、要するに「飲みます」の系列だったから揃っていたけれど、なんだ、「飲みます」の系列のほかにも、いろいろな形があるんだ。やれやれ……。 というわけで、このころから日本語が身につかなくなってしまう人が結構いるのですが、実は、この時期-動詞の変化の初歩を勉強する時期-がいちばん大事な時期なのです。この時期の勉強のポイントを中心に、このページでは動詞の話をしましょう。 前のページでは、日本語の文法上の特徴をいくつかあげましたが(「日本語って、どんな言葉?」)、その一つとして、動詞の後にさまざまな要素が付く言語であることを述べました。 否定や時制だけでなく、たとえば可能・使役・受身・モダリティ(英語でいえば、may,must,let'sなどのような意味)などをあらわす要素も、動詞の後に付きます。前回あげた「飲む」drinkで、復習も兼ねて例をあげてみると、「飲まない」(否定)、「飲んだ」(過去)、「飲んでいる」(進行)、「飲める」(可能)、「飲ませる」(使役)、「飲まれる」(受身)、「飲むだろう」(推量)、「飲もう」(意志)……などとなります。 また、前回は触れませんでしたが、2つの節を接続するとき、前の節の動詞が、2つの節の関係に応じて形を変えます。たとえば、「飲めば」(if I drink)、「飲むので」(because I drink)……というようにです。 そして、これらのさまざまな要素を組み合わせた形、たとえば「飲めなかったので」(because I couldn't drink,可能+否定+過去+理由)のような形も、ごく普通に使われます。 このようなさまざまな要素まで含めて動詞と捉えるとすれば、日本語の動詞は、まことにさまざまに変化することになります。 動詞がさまざまに変化する
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