(以上は、「東京大学日本語教育センター・ニュース」33号に掲載の菊地康人〈本センター元教授〉「日本語の特徴を知って効果的に勉強しよう(1) 日本語って、どんな言葉?」とほぼ同じ内容です。 10 (6) あなたはいつ大使館へ行きますか。(When will you go to the embassy? )(7) わたしはあした大使館へ行きます。(I'll go to the embasy tomorrow.)というようなやりとりが、伝統的な日本語の初級教科書にはよく出てきます(「あなた」はyou、「いつ」はwhen、「大使館」はembassy、「へ」は助詞でtoの意味、「行きます」はgo;「わたし」は、「あした」はtomorrowです)。しかし、実は、日本語では、 (6') いつ大使館へ行きますか。 (7') あした行きます。 というやりとりのほうが、ずっと自然です。日本語は、わかっている名詞(+助詞)は、主語であっても述べなくてよい言語なのです。このことにも、ぜひ触れておきましょう。 伝統的な日本語教育が「完全な文」を示すのは「文型(構文)」を学習者の頭に入れるためで、これは語学教育の大事な要素ではあるのですが、行き過ぎると不自然なことにもなりかねません。「文型(構文)」の知識を確実に習得して体系的な理解を深めていくことと、自然なコミュニケーションの力を高めること。日本語の学習にあたっては両方とも大切です。もちろん、私たち日本語教育センターの日本語教育は、この両方に配慮しています。 大事な点のまとめ : 日本語学習へのアドバイス(1) 日本語では、助詞と動詞が特に大事。 1. 名詞の後の助詞が、名詞の役割をあらわす。 田中さんは佐藤さんときっさてんでお茶を飲みました。 2. 動詞は文末にあって、肯定・否定や時制などの情報を含む。 飲みます(現在・肯定) 飲みません(現在・否定) 飲みました(過去・肯定) 飲みませんでした(過去・否定) わかっている名詞+助詞は述べなくてよい言語
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