8 当然、それらが2つ以上重なって付くこともあります。たとえば、「飲まされなかったはずだ」という場合、「飲む」の後に使役・受身・否定・過去・モダリティと、5つもの要素が付いています。このようなタイプの言語は膠着語agglutinative languageと呼ばれます。日本語は典型的な膠着語です(この点も、韓国語やトルコ語と同じです)。なお、2つ以上の要素が重なって付く場合、その順序にはある程度のきまりがあります。 このように、動詞の後にさまざまな要素が付くのが日本語の特徴です。これらの要素まで含めた全体を動詞と捉えるとすれば、日本語の動詞は、とても豊かな情報を持ち、また、まことにさまざまな形に変化することになります。 そこで、日本語を習得する上では、このように動詞のさまざまな変化形をしっかり身につけて、すらすらと使えるようにしていくことが、とても大切な一面になります。大変そうに思えるかもしれませんがルールをしっかりおさえて追っていけば、大丈夫です。これについては次のページ「動詞とその活用」で詳しく述べましょう。 なお、動詞が文末に置かれる上、その動詞にいろいろな情報が付け加えられるので、日本語の文は最後まで聞かなければ重要な情報がつかめない-肯定か否定か、ということさえわからない-、ということにもなります。この点は不便といえば不便ですが、これを補うために、前もって文末を予告する機能を果たす副詞もいろいろ発達しているので、実際にはそれほど不便でもありません。このことも付け加えておきたいと思います。 語順の自由度が高い言語 先程、日本語の基本語順はSOVだと述べましたが、最も大事な点は《動詞を最後に置く》という点です。これさえ守れば、実は、これ以外の点では日本語の語順はかなり自由で、主語を目的語より後にまわすことなども可能です。 なぜでしょうか。まず、今見たように、動詞の部分がいろいろな情報を取り込んでしまうため、文全体の構造としては(単文の場合ですが)、動詞以外は「名詞+助詞」(および副詞)がいくつかあるだけという、すっきりしたものになります。その上で、それぞれの名詞には、その役割を示す助詞が付いているわけですから、「名詞+助詞」をセットにして動かしさえすれば、語順を変えても、情報は失われないわけです。 そこで、日本語では語順の自由度がかなり高いのですが、それだけにまた、助詞は一層大事だということにもなります。 なお、語順の自由度が高いとはいっても、一般的には《主語を文頭に、目的語を動詞の直前に》という語順が最も自然なので、初めのうちは、やはり、この語順で練習することをすすめます。
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